美容室の経営を始めるとき、又はすでに美容室経営を行っていても疑問に思うこと・・・
「美容室経営は、個人でやるのと会社でやるのと、どっちの方がメリットが大きい?」

答えは、簡単には出ません。
みなさんの状況によってどっちが有利か不利かが変わってくるからです。

ただし、一般的には、規模の小さいうちは個人で、ある程度の規模になってきたら会社形態にする、という手法が主流のようです。(個人事業で始めて途中で会社形態に変更するということは可能です。)

規模の小さいうちは個人で、ある程度の規模になってきたら会社形態にする、という方法が一般的なのは、以下の理由によります。

個人の場合のメリット

個人事業の場合、所得税を納めます。所得税は累進課税です。(所得が増加するにつれて税率が上がります。)
ですので、規模の小さい=所得の少ないうち(課税総所得金額が195万円まで)は、最低税率の5%の所得税ですみます。 
一方で会社形態の場合、法人税を納めます。法人税率は低くても16.5%(※1)です。また、赤字でも、納めなければならない税金があります。(-_-;)
個人事業の場合、事業の開始は届け出を一枚出せば終わりです。廃止もほぼ同様です。つまり、諸々の手続が簡単です。
一方で、法人の設立には様々な手続を要しますし、費用も生じます。(最低でも20万円程度。)また、会社をたたむ(廃業)ときにも、一定の手続を要し、煩雑です。
ですので、まずは気軽にそしてお手軽に始められる、個人事業で始める人が多いのです!
個人事業の場合、所得税の計算上、交際費は全額経費になります。
一方で、法人の場合には、経費になる金額には限度があります。
ただし、個人の場合、交際費として扱えるのは、売上を得るために「直接」要したもののみです。つまり、個人的な飲食代が何でも経費になるわけではないので、注意しましょう。
個人の場合、簡単に表現すれば、売上―経費から税金を支払った残りが、個人の稼ぎ=自由に使えるお金になります。当然その額は毎月変動することが通常です。
法人の場合、役員の給与は、毎月変動させてしまうと税金が高くなってしまいます。

でも・・・もちろん、法人形態で事業を行うメリットもあります。

法人の場合のメリット

対外的な信用が増すことにより、銀行からの融資が受けやすい!
規模が大きくなった=所得が大きくなったときには、会社の方が税金が安い場合がある!
個人事業の場合には、累進課税ですので所得が大きくなると税率も高くなります。(最高40%)会社の場合には、高くても28.05%(※1)の税率です。
所得を分散できる!
個人事業の場合に係る所得税は、累進課税です。ですので、所得が増えれば、高い税率がかかります。これを会社にした場合、所得が会社の所得と社長のお給料に分散されます。分散されれば給料としては、全て個人事業の所得としているよりは減りますから(その分会社の所得になります。)、全て個人の場合よりは低い税率ですむケースがあります。
自分自身が引退するときは、後継者への事業承継が行いやすい!
(※1)平成24年4月1日~平成27年3月31日までの間に開始する事業年度の税率です。

などなど・・・

(例1) 売上2,000万、経費1,500万

個人の場合所得の計算7,000-5,000-65(青色特別控除)=1,935万円
税額の計算1,935×40%-279.6=494.4万
→ 約500万円の納税
法人の場合所得の計算7,000-5,000(※2)=2,000万円
(非常に簡便に計算しています)
税額の計算800×16.5%=132万円
(2,000-800)×28.05%=336.6万円
合計 468.6万
→ 約470万円の納税

→ このケースでは、法人の方が有利!

(※2)個人事業と同じ額の経費を前提にしていますが、実際には、これに加え、社長の給与が経費となりますので、会社の所得・法人税はより低くなります。一方、当該社長の給与には別途、所得税がかかります。

ただし、規模が小さいうちは個人の方が有利、大きくなれば法人の方が有利、というのも、ケースバイケースです。また、数値でははかれない個人ないし会社の事情もあります。

実際に検討される際には、個別に計算する必要がありますのでご注意ください!